私の愛する受け持ち患者、トキタ君の転院先が決まった。
そして明後日12日に退院することになった。
明後日は、私は日勤におらず、彼にさよならを言って送り出すことができない。
トキタ君はまだそのことを知らない。
退院ギリギリまで内緒にしておこう、と、看護師サイド、Dr、家族の話し合いで決まったからだ。
彼がもしそのことで動揺をしてしまったら、どんな行動に出てしまうかもわからない、と危惧をしたのだ。
私は言ったところで、すぐに忘れてしまうと思うのだけど・・・。
何だかまだ実感がわかない。
でもきっとあっさり行ってしまうのだろうな。
そんな気がする。
トキタ君は私の名前をついに覚えなかったな。
私が担当だってこともきっと知らないんだ。
最近はもうあきらめて、私は彼に自分の名前を名乗ることもやめてしまっていたし。
初めの頃は私のことを覚えてもらおうと頑張ってたっけ。
彼を車椅子に乗せ、ナースステーションまで連れてきて、彼が字が書けることを確認した後、私の名前を紙に何度も書かせたりしたっけね。
とおりすがりのDrに「何だか宗教じみてるね」なんて言われたさ^^;
本当に手のかかる患者だった。
何度も死にかけたし。
今現在、私の勤務する病棟で、一番入院日数の長い患者になってしまったなあ。
まさか復活してしまうなんて思わなかったもんなあ^^;。
つい最近、トキタ君と同じく「重症アルコール性肝炎」でトキタ君よりも若い人が亡くなったの。
だから尚更思う。
回復は奇跡だったんだって。
頭の方はついに回復しなかったけどね。
私のことを「過去の女」って言ってみたり、奥さんだと思い込んで怒鳴ったり。
別のスタッフに「俺、子供3人いるけどいいんか」とか言っていきなりプロポーズしてみたり、看護師の体に触ってみたり(私も2・3度ある)。
・・・いなくなってしまうんだなあ。
明後日、トキタ君が退院する時間帯に病棟に行こうかなあ。
ちょっと、さみしいなぁ・・・。
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