夜勤明けです。
年末年始は、一般に入院患者は少ない。
うちの病棟も例外ではなく、何事も無ければ楽な勤務なはずだった。
そう、その「何か」が起きてしまったのよ。
準夜から深夜に引き継がれるまでは、穏やかに過ぎていた。
2時になり、寝たきり患者のおむつ交換に回り、その後巡視をする。
巡視中、他チームの後輩が慌てて私のところに来た。
「○○さん、冷たいんです!」
ええ!?
慌ててもう一人の看護師とその患者さんのところへ行く。
すでに息はしておらず、瞳孔も散大している。
モニターをつけると心拍はフラット(心拍数ゼロってことね)。
青ざめる暇も無く、救急カートを運び、空いている個室にその患者のベッドを移し、心肺蘇生を開始する。
老人ではなく、数時間前までは自分の足で歩き、外泊を目前にした患者だった。
信じられない気持ちを抱えながらとにかく動く3人の深夜勤看護師。
私がドクターコールをし、家族に連絡する。
家族にはすぐに連絡がついた。
しかし、運悪く昨夜からその患者の主治医は休暇中で長野にはおらず、代行担当医の自宅は病院から車で1時間近くかかるところにある。
しかも雪が降り、路面は凍結している。
とりあえず蘇生を優先させなければ、と思いその夜の当直医に連絡し、その後担当医にTELをした。
当直医はその患者の病名も知らないほど、うちの病棟とは関わりの無い医師だったのだが、とりあえず分からないなりに私達に指示を出した。
心臓マッサージをしても、気道を確保し酸素を送り込んでも、薬剤を投与しても、その患者は息を吹き返さない。
心臓マッサージの途中、その患者の肋骨が折れた。
もうだめだ・・・、そう分かっていても、担当医が到着するまで私達は交代で心臓マッサージを続ける。
まもなくして家族が到着する。
心肺停止状態のその姿を見て愕然とする家族。
「何で!?急に・・・こんなことってあるんですか!?もうすぐ外泊もできるって先生に言われたんですよ!?」
その状況を受け入れられず、医療者の私達に噛み付く家族。
無理も無いが、やりきれない私たち。
数十分後担当医到着、その医師の指示で蘇生を終了する。
担当医が分かる範囲での現状を家族に説明した後、死亡確認が行われた。
死後の処置をほどこし、朝方になりその患者は死亡退院された。
ぐったりした私たちスタッフ。
でも、そこで終わりじゃなかったんだな。
その患者の死には、ちょっとしたいわくがあるかもしれなかった。
その患者は、前日の朝、体重を測りに行ってもらった際、よろけて転倒し、上腕を骨折していた。
病棟内で起こる患者の転倒・転落事故の責任の所在は、私たち病院スタッフに求められる。
そしてその骨折が、その死因につながるものだったかもしれないのだ。
その死因を明らかにするには、解剖とかしてみないと分からないんだけどね(家族が解剖を希望しなかったため、今回は行われなかった)
私は整形外科的なことは良く知らないんだけど、骨折した際に、砕けた骨の成分が血中に入り込んでしまい、死亡につながってしまうことがあるらしい。
つまり、転倒事故が引き金になり死亡してしまった可能性がでてきてしまうのである。
納得できない家族から訴えを起こされてもおかしくない状況。
朝になり師長がお正月休みを返上して来棟。
今回の件について、看護部長から呼び出しをくらっているという。
師長に状況説明をする私たち。
師長は事細かに、家族の反応なども含め聞いてくる。
昼近くになりやっと私たち解放。
肉体はぐったり、その気持ちはドロドロ。
と、いうわけで、とてもめでてー気持ちにはなれないのである。
本当は今日皆さんのところに年賀絵を持っていこうと思ってたんだけど、今日はやめとく。
明日も仕事。
3日になったらご挨拶に伺いますね。
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